雑誌掲載レポート
TBCベタコンテスト

日本では一般的にショーベタというとハーフムーンタイプのベタを思い浮かべることが多いと思うが、ほんとうはショー(コンテスト)に出品できるレベルのベタなら、どんなタイプのベタでもショーベタである。
実際IBCのコンテストでは、「ハーフムーン」、「フルムーン(ハーフムーンのダブルテール)」、「クラウンテール」、「プラカット」、「ワイルドベタ」、「その他(ジャイアントベタなど)」という6つの部門に分かれ、さらにその下にカラーや種類別のクラスが多数存在する。
今回開催されたコンテストも、前回のジャカルタでのコンテスト(本誌3月号に掲載)同様、アメリカに拠点を置くIBCが公認する国際コンテストで、その傘下で地元のTBC(タイランド・ベタクラブ)が主催している。前回も述べたが、IBC公認のコンテストでは、IBCの公式審査員のみが、その審査基準によって出品されたベタを審査する。
今回は審査員長であるTBC会長Jesda氏をはじめに、審査員は、地元タイのPeurmsak氏、インドネシアのJoty氏、シンガポールのHsu氏とEdwin氏、フィリピンのGary氏、そしてオーストラリアのJodi氏の計7名である。
この公式審査員になるには、まずセミナーを受講して、見習い審査員として2年以内に3回のIBC公認コンテストでの審査トレーニングを受けなけらばならない。そして最後は、筆記試験に合格することが条件である(3月号参照)。
我々日本人にとって(タイ人も?)難関なのは言葉の壁である。IBCの審査基準と審査方法を書いた本があるのだが、全部英文で書かれており、最後の筆記試験も英語である。なにしろ審査員同士の会話はすべて英語なので、基本的に英語ができる人でないと審査員になれない。私も英語がさほど得意なわけではないので、審査員になろうという気はなかったのだが・・・。
今回のコンテストは、TBC会長Jesda氏の自宅の中庭で行われ、厳選されたハイレベルのブリーダーコンテストといった印象であった。自宅といっても、バンコク中心部の超高級住宅地にある大豪邸である。
その会場でコンテスト目録を読んでいると、なぜか私の名前が載っている。何のことかとよく見てみると、アプレンティス・ジャッジ(見習い審査員)と書いてあるではないか。私は自分が知らないうちに、審査員トレーニングをすることになっていたのだ!みんなに訊くと「当然だろ、何しに来たんだ」というではないか。
さて、問答無用で他の審査員からセミナーを受講した後、私は2人の公式審査員と一緒に審査に参加した。審査員は2人一組で、今回は3組が各クラスごとに手分けして審査していった。
審査は減点法で各クラスの審査基準にのっとって、出品されたすべての個体に点数をつけてゆく。日頃ベタを見慣れている私であるが、なにしろ出品されているベタはレベルが高すぎて、欠点が見当たらない。それでも2人の公式審査員は、かすかな欠点をみつけて減点してゆく。たしかに説明されるとその減点の理由は理解できるが、ほんとうに1匹1匹真剣に細かく魚体の各部分を見てゆかなければならない。
炎天下の暑い中、集中力を維持するのは並大抵の仕事ではない。しかもベタを見過ぎて目が痛くなってくる。我々3人は1匹1匹時間をかけて観察し、細部はペンライトなどで照らしてチェックして、用紙に点数を記入していく。審査が終わると各クラスの優勝魚、準優勝、3位までを選出する。次に、全員の審査員たちの合議で、各クラスの優勝魚から、部門優勝のベタを選ぶ。さらに同じく合議制で、各部門の中から総合優勝のベタを選ぶのだ。
これも違う意味で大変である。同じヒレのタイプである部門優勝魚を選ぶのならともかく、総合優勝を決めるのには、ハーフムーンやクラウンテール、プラカット、はたまたワイルドベタなど、全然違うベタを比べなければいけない。いったい、どうやって比べればよいのか?
実際これはかなり時間をかけて、喧々諤々(けんけんがくがく)の議論がなされた末に決定されたのだが・・・。
実は今回のコンテストには、試しに当店で販売しているベタをこのコンテストに出品していた。
ハーフムーンやクラウンテールなど改良品種では、本場タイにはかなわないだろうと思った弱気な私は、得意なワイルドベタで勝負してみたのである。日頃から当店の販売水槽で大切に飼育しているワイルドベタ3種、ベタ・マンドール、ベタ・タエニアータ、ベタ・アントニーを出品していた。
しかし何しろ今回は、突然の見習い審査員のため大忙しで、出品したワイルドベタのことなどすっかり忘れていた。表彰式の時でも、自分は関係ないとばかりに後ろの方で公式審査員の人たちと話をしていると、前のほうから私の名前を呼んでいるではないか。
何のことかといってみると、司会者からメダルを2枚、首に掛けられた。よく見ると、金メダルと銀メダルである!なんと私は、ワイルドベタ部門、マウスブリーディングタイプ中小型種クラスで、優勝と準優勝を獲得したのであった。優勝したのは、ベタ・マンドール、準優勝魚は、ベタ・タエニアータである。なんと日本人として初めての受賞であった。
今回のコンテストは前回(ジャカルタ)のような傍観者ではなく、見習い審査員になったり、はたまた出品したワイルドベタが優勝と準優勝を独占したりと大忙しであった。しかし、海外のベタコンテストで日本人として初めて優勝し、さらに準優勝も同時に獲得したのは大変光栄なことであった。また、同じ趣味を共有する者たちの集いがこれだけ楽しいものなのかと改めて実感した。こうやって、ベタという趣味の輪が広がっていくのかと、納得させられたような気がしたコンテストであった。




