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インドネシアのベタ事情

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インドネシアは、まさにいま経済絶好調である。
首都ジャカルタでは、高層マンションや巨大ショッピングセンターが続々と建設されており、道路は車であふれ、その発展ぶりは目を見張るものがある。


アジアの発展と言えば、近年とかく中国とインドばかりがクローズアップされるが、この国の国土面積は日本の5倍でアジアで3位、人口は2倍で世界でも4番目に多い大国である。
従来観賞魚といえば、この国にとっては海外への輸出品でしかなかったのだが、近年台頭してきた富裕層たちによって、新たな趣味の対象となってきており、またその熱の入れようは、日本人の比ではない。

今回は、この国のなかでも特に最近人気急上昇中のベタに焦点を当てて、その熱狂ぶりをレポートしたい。

 
会場には、756匹とものすごい数のショーベタが並んでいる


ジャカルタのスカルノ・ハッタ国際空港に到着した私を出迎えてくれたのは、地元のアマチュアブリーダー、ヘルマヌス(Herumanus)氏であった。彼はインドネシアにおけるベタ愛好家の代表者的存在で、アメリカにある世界最大のベタ組織IBC(インター・ベタ・コングレス)のコンテスト公式審査員で、その傘下のBCI(インドネシア・ベタクラブ)の会長を務めている。また彼はベタの普及に非常に熱心な人物で、今回行われるインターナショナル・ベタショーに合わせて、私をジャカルタに招待してくれたのだ。さっそく私は、彼の自宅にあるベタファームを見せてもらった。

ハーフムーンはもちろん、プラカットやクラウンテールが所狭しと小型水槽で育成されている。趣味と言っても、このクラスの人物になると、ベタの水換えなど基本的な世話は、すべて使用人が行っている。実際のところ彼は、インドネシアでベタの趣味が盛り上がる前から、ショーベタのコンテストブリーダーで、アメリカはもちろん、スイスやドイツのコンテストで優勝した実績を持っている。彼のファームで、とても珍しいベタを見つけた。 アルビノのベタである!ベタの世界では、アルビノベタが系統としてはまだ存在せず、私もいままで2回しか見たことがない。

彼の友人が通常のプラカットを繁殖させた際に、偶然出現したものをプレセントしてくれたそうだ。オスのプラカットで、プラチナホワイトの体色、目は完全な赤色である。
ただ残念なことに、アルビノは基本的に視力が弱く、とくにこの個体はほとんど目が見えないようで、泡巣を作らないし、メスも識別できないようで、繁殖させて次世代を得るのは不可能だとのこと。






このたびはジャカルタ中心部にある、ワールドトレードセンターにて地元の観賞魚フェアーが行われていた。アロワナやフラワーホーン、ディスカスなどはもちろん、金魚や爬虫類まで数多くのブースがあり、さまざまな生物が展示されていた。

ヘルマヌス氏が設営したベタのブースでは、たくさんの種類のワイルドベタが展示されていた。彼は近年ワイルドベタの繁殖にも興味があり、彼が所有するビルの一室にワイルドベタの繁殖室がある。展示されているのはすべて彼のコレクションである。

日本でも知られているようなワイルドベタはもちろん、今回私も初めて目にしたユニマクラータ・グループの新種ベタやマクロストマのニュータイプなども展示されており、ワイルドベタマニアにはたまらないブースであろう。

多くのワイルドベタの生息地はインドネシアに集中しているが、地元の人々はこのような魚が自国に存在することを全く知らない。彼は、今回地元の人にこのことを啓蒙したかったそうだ。

 
大きなグリーンスポットが美しいベタ・ブロウノルム。観賞魚フェアーの会場にて

日本未入荷のワイルドベタの一種。ユニマクラータ・グループだが、体がベタ・ルブラのような黒いバンドが数本はいる。観賞魚フェアーの会場にて


さて、今回この観賞魚フェアーにあわせて、ショーベタの国際コンテストが行われた。アメリカに拠点を置くIBCが公認する国際コンテストで、その傘下で地元のインドネシア・ベタクラブが主催である。IBC公認のコンテストでは、IBCの公式審査員のみが、その審査基準によって出品されたベタを審査する。
参加した公式審査員は、今回の審査員長ヘルマヌス氏、同じく地元インドネシアのIndorata氏、シンガポールのEdwin,Lyon両氏、タイのJeasda氏、フィリピンのGary氏の6名である。
1日目が出品魚のエントリーであったが、出品魚を持って来たたくさんの人が並び、延々とエントリーの手続きが行われる。出品されたベタを水槽に入れて部門やクラス別に並べるだけでも大変な作業である。


今回出品されたベタは、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピンの5カ国から、なんと756匹にものぼった。日本のローカルコンテストでの出品数が100匹ぐらいと聞いているので、この規模の大きさが想像できるであろう。さらに驚かされるのは、IBCのベタ出品部門の大きさである。

通常日本では、ショーベタと言えばハーフムーンのことを指すが、IBCでは、ハーフムーン部門はもちろん、ハーフムーンダブルテール、クラウンテール、プラカット、ジャイアントプラカット、メス、はたまたワイルドベタ部門までもあり、さらにそれぞれの部門のなかから色彩別のクラスに分かれている。ワイルドベタも、泡巣タイプ、小型マウスタイプ、大型マウスタイプのクラスに分かれている。

さて、公式審査員は2人1組になり、各クラスの審査基準にのっとって、出品されたすべての個体に点数をつけてゆく。これまた大変な作業である。

(1)体とヒレと全体の大きさ、全体の均整、ヒレと体の割合、体と鰭と全体の形状、といった全体の形質と状態とその動き。
(2) 背ビレ、尾ビレ、尻ビレ、腹ビレ、胸ビレ、の大きさ、均整、割合、形状。


それに加えて各部門特有の基準があり、各クラス別のカラー基準があり、さらに失格事項などもある。もちろんこれらのIBC審査基準と審査方法をまとめた本があり、私も読んだことがあるが、とても細かく多岐にわたっており、しかもすべて英文なので、完全に理解するのはなかなか困難である。

実際のところ、公式審査員になるには、セミナーを受講して、筆記試験に合格し、3回のIBC公認コンテストの審査トレーニングを受けなければならない。当然ながら、審査員の審査は真剣そのもので、前日まで冗談を言って私をからかっていた彼らであるが、審査中は話しかけても返事すらしてくれない。むしろ、私の取材は邪魔というか迷惑そうであった。

 
ショーベタ・コンテスト出品魚のエントリーが始まった。出品者たちの意気込みが伝わるだろうか?

各審査員は、懐中電灯を使って細部まで観察し、採点していく

最終的には、審査委員全員による合議制で優勝魚が決定される。かなり厳正な審査である

審査中、一般の見物者は完全にシャットアウトされたなか、私は関係者と称して勝手に入っているだけなので当然であるが。2人1組の審査員は、一匹一匹時間をかけて観察し、細部はペンライトなどで照らしてチェックして、用紙に点数を記入してゆく。審査が終わると点数の多い順に、各クラスの優勝、準優勝、3位までを選出してゆく。そして、今度は審査員たちの合議によって、各クラスの優勝魚から部門優勝の魚を選ぶ。さらに同じく合議制で、各部門の優勝魚のなかから総合優勝の魚を選ぶのだ。審査は2日目に行われるが、朝から始まって夕方までたっぷり1日かかったのである。


入賞したベタは、どれも見事で、息をのむ美しさであった。
なにしろ絵に描いたようにすべて完璧で、欠点が見当たらないのだ。それに、闘争性は抜群でヒレを目いっぱいに広げて威嚇するのはもちろん、その姿を我々に美しくアピールしているようで、まさにこれこそがショーベタなのかと改めて感心させられた。

3日目は、入賞者の表彰である。それぞれ部門下での各クラスの優勝者、準優勝者、3位入賞者が表彰され、そのあと各部門の部門優勝者の表彰と続く。なにしろ全員で120人もの受賞者がいる。そして最後には総合優勝者がトロフィーを受け取って、観客から大きな拍手を受けていた。じつは、このトロフィーを手渡したのは、アルファマートというインドネシア最大のコンビニエンスストアーの社長である。彼は、個人的にはフラワーホーンの愛好家で、今回の観賞魚フェアーを企業として主催した。まるでセブンイレブンやローソンの社長が熱帯魚マニアなのと同じであるが、ちょっと日本では考えられないことであろう。

ちなみに、総合優勝を果たしたのは、地元の若い女性である。見た目はどこにでもいそうな高校生か大学生ぐらいであるが、彼女はすごい。このコンテストにおいて、7つのクラスで優勝し、プラカットの部門優勝を果たし、そしてグランドチャンピオンに選ばれたのである。ほかにも、シンガポールからやってきた女性も、3つのクラスでそれぞれ優勝、準優勝、3位入賞を果たしていた。そういえば当店のお客さまも、最近女性のほうが多い。ベタはさまざまな観賞魚のなかでも特に女性にも人気があるジャンルなのだといえるだろう。

いずれにせよ、このインターナショナル・ベタショーは過去に例を見ない盛大な大会となったそうである。これはインドネシアはもちろん、東南アジア全体のベタ飼育の盛り上がりがもたらしたものであろう。日本はショーベタの世界では、完全に東南アジアに後れをとっている。

次回開かれるインターナショナルコンテストには、ぜひ日本の愛好家にもショーベタを出品してほしい!それを私がサポートしなければならない!そういう強い思いを抱いて、私はこの熱い街を離れたのである。

 
ハーフムーン部門、ブルー・クラスで優勝した個体。
ヒレが見事な円を描いている

ジャイアントプラカット部門で優勝した個体。黄金に輝くゴージャスな体色

グランドチャンピオンは、地元の若い女性であった。カップを手渡しているのは、スポンサー企業であるインドネシア最大のコンビニチェーン、アルファマートの社長

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